”発達障害”は天才性の宝石箱やぁ~! ― 気持ちが楽になる発達障害/グレーゾーン/発達凸凹の子育て思考法 ―
更新日:2022年10月4日
最近は”障害”という言葉はネガティブなイメージを与えるとか、差別的などの理由で、”発達障害”ではなくて、”神経発達症”と呼ぶらしいです
神経発達症とは?
神経発達症は、DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアルで採用された用語で、知的能力障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
発達障害者支援法
発達障害は、発達障害者支援法で「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
そして、僕は小児科医なので外来で、"発達障害"(神経発達症)、発達凸凹、グレーゾーンの子供達の子育て/育児で毎日頑張っているお父さん、お母さんをたくさんみてきました。
そして、僕も二人の子供を育てる父親でもあります。言わば、”育ての同志”であり、”業の同業者”でもあります。実は僕はADHDの傾向があり、それは子供達にも見事に引き継がれています。ですので、子育ての実体験にNLP(神経言語プログラミング)/コーチングの要素をちょい足しして、子供達やお父さん、お母さんとお話しをしています。
今日は小児消化器医×NLPトレーナー×父親としての視点からお話しさせて頂きます。 ただし、僕は小児神経科医でも、児童精神科医でもないのであくまで、小児消化器医×NLPトレーナー×父親の視点からということをご理解ください。
”発達障害”は天才性の宝石箱やぁ~!
― 気持ちが楽になる発達障害/グレーゾーン/発達凸凹の子育て思考法 ―
目次
なぜそんな行動するの?を知って、ゆる~り子育て
発達障害は食事が原因!? 本当かウソか
他の子は出来るのに何でうちの子はできないの?日常生活のあれこれ
「自分と同じ思いをさせたくない」という愛情がイライラの原因かも
テクニックよりも、愛情よりも、子供達に必要なこと
アフリカのサバンナで暮らしたら”発達障害”ではない!?
『失敗から学べ』は正しい育て方か?
”ちゃんと”って何?
子供に呪いがかかる!?”ヘリコプター・ペアレント/カーリング育児”とは
”発達障害”という才能 ―世界のリーダーは発達障害だらけ

1.なぜそんな行動するの?を知って、ゆる~り子育て
かんしゃく、パニックはなぜ起こすの?
―自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)―
まず最初に伝えたいことは、神経発達症(発達障害)の人は、行動パターンが多くの人と異なる場合がありますが、その理由は脳の働きに特性があるからで、本人の努力不足や親のしつけは原因ではありません。あなたの育て方が悪かったわけではないし、お子さんがわがままなわけではありません。
ただし、残念なことに日本ではまだ神経発達症(発達障害)に対する理解が低く、「しつけが悪い」、「本人の努力が足りない」という言葉で、お父さん/お母さんや本人を傷つけるような言葉を投げかけられることはあると思います。
そのようなときは、相手を不快にさせたことは謝罪して、「みんなこの子の天才性に気づいていないだけ、この子の天才性の宝石箱に気づいているのは私だけ」と心の中で唱えて、相手の言葉はスルーしましょう。
”相手の世界観を尊重”して、声にならない子供のSOSを見つけよう
私達は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を通して情報を脳に送っています。その情報量は毎秒1100万ビットともそれ以上とも言われています。YoutubeのHD画質モード、つまり高画質モードが毎秒約200万ビットですので、毎秒1100万ビットはYoutube動画5.5本分を同時に見ているくらいの情報量です。そんな情報が頭に入ってくると脳がパンクしてしまうので、フィルターをかけて毎秒126ビットに絞り込んでいると言われています。このフィルターは人それぞれで受け取る毎秒126ビットの情報もひとそれぞれです。
ですので、例えば目の前にこんな人がいたとします。

ある人は、毎秒126ビットの情報を受け取った結果、「私を睨みつけている」⇨「怖い」と感じます。
しかし、別の人は毎秒126ビットの情報を受け取った結果、「私を笑わそうとしてる」⇨「面白い」と感じます。
どのような毎秒126ビットの情報を受け取って、どのように世界を見ているかというのが、その人の”世界観”であるとNLPでは考えます。
世界観は人それぞれです。とは言え、同じような文化や生活習慣の中で暮らしているとある程度似たような世界観を持つことができます。だから、私たちは”空気を読む”ことが出来るのです。しかし、神経発達症(発達障害)/発達凸凹/グレーゾーンと呼ばれる人たちの中には、似ていない世界観を持っています。そして、彼らは彼女らは”空気を読む”ことが苦手だったりします。だから、周りに合わせることが苦手だったり、周りから理解されずに”変わった人”認定されて、苦しい思いをしたりします。
一方で、ゴッホや山下清のように自閉スペクトラム症の人がきれいな色遣いで独特の世界観を絵画で表現します。これは彼らの世界観が私達とは違うからであり、これこそ発達障害の人が持っている天才性の宝石箱です。
■■■世界観/フィルターについて詳しく知りたい人はこちらの動画から■■■
相手の世界観を尊重するということは、良好なコミュニケーションを取る上での大原則なのですが、私たちは、ついつい自分の世界観を他人に押し付けがちです。神経発達症(発達障害)/発達凸凹/グレーゾーンの子供と接するときにも、その子の世界観を尊重する必要があります。
私達にとっては大したことがじゃなくても、その子にとっては重大なことがあるのです。ただ、私達の世界観とは違うから私達が気づきにくいだけ。例えば、音が大きかった・強かった、聞き慣れない音がした、ある物がいつもと違う場所にあったなど、私達にとっては大したことがなくても、その子にとっては重大なことがあるのです。
そして、神経発達症(発達障害)/発達凸凹/グレーゾーンの子供は言葉で自分の感情や気持ちを表現することが苦手な子が多いのです。だから、パニックやかんしゃく、大声を出すという方法でしかSOSを出せないのです。パニックやかんしゃく、大声を出すというのは、その子にとってできる最大限の『SOSの表現』なのです。
NLPの前提にはこんなものがあります。”NLPの前提”とはNLPの基本的な考え方です。
人は、持てる限りのリソースを使って最善を尽くしている。
リソース (resource) とは、資源という意味ですが、”役に立つ”物・事・能力など”と考えてください。パニックやかんしゃく、大声を出すというのは、神経発達症(発達障害)/発達凸凹/グレーゾーンの子の持てる限りのリソースを使った最善を尽くした結果なのです。
神経発達症(発達障害)の子のパニックやかんしゃくへの対処法
まずは、子供を少し静かな場所に連れていき、できるだけ刺激を減らしましょう。そして、落ち着くことができるようにしてあげることが大切です。そして、客観的にその子が不快に感じていること、もの、状況を探しましょう。 実際に目の前で子供がパニック、かんしゃくを起こしていると、イライラしたり、これが一生続くのではないかと不安になったり、悲しくなったりすることもあると思います。実際に保育園の登園前にパニック、かんしゃくを起こして、保育園を休ませることになり、自分も仕事を休まざるを得なくなった方もいるかもしれません。
夫の協力がえられず、ワンオペ育児をしているお母さんたちは、なおさら、イライラ、不安、悲しみが大きくなるでしょう。 しかし、こんな時こそ、お父さん、お母さんは、大きく深呼吸をして呼吸を整え、体をゆすったりしながら体の力を抜いてリラックスして、客観的に状況を見るようにしましょう。
お父さん、お母さんのイライラ、不安、悲しみは子供に伝わり、子供のパニック、かんしゃくはさらにひどくなることがあります。
NLPにはアソシエイト、ディソシエイトという考え方があります。
状況に入り込み、感情的になり、主観的にしかものごとをみれない状態がアソシエイト。
反対に、その状況から一歩ひいて、感情から抜け出して、客観的にものごとを見ている状態がディソシエイト。
子供がパニック、かんしゃくを起こしたときは、まずはお父さん、お母さんは、ディソシエイトの状態になり、客観的に状態をみるようにしましょう。そのためには、深呼吸、リラックスです。
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2.発達障害は食事が原因!? 本当かウソか
神経発達症(発達障害)の子は食事へのこだわりも強く、極端な偏食も
結論から先に言うと、ウソです。科学的根拠がありません。
私の食事が悪かったのか?妊娠中食べたものが悪かったのか?と自分を責めるお母さんがおられますが、ニセ情報に惑わされないようにしましょう。
発達障害の子は食事へのこだわりも強く、「○○しか食べない」ということが良くあります。お母さんが愛情をこめてつくった食事を食べてくれないと悲しくなると思います。一部の本やネット情報では、「発達障害は食事で良くなる」、「大量の糖質、小麦製品、悪い油、乳製品がよくない」といっています。それを信じて、一生懸命、食事をつくるけど、食べてくれなくて、イライラ、悲しみ、不安、これが子供に伝わって、子供も頑固になり、食べてくれない。こんな悪循環に陥っているお母さんもいます。間違った情報を信じたお母さんが極端にかたよった食事を子供に提供して、子供が栄養失調になってしまうこともあります。
食事への極端なこだわりと偏食のために、鉄分不足、ビタミン不足、カルシウムなどのミネラル不足、低血糖になどになっている場合には、それを補うような食事やサプリを与えることで、鉄分不足、ビタミン不足、カルシウムなどのミネラル不足、低血糖などからくる症状が改善するため、一見すると神経発達症(発達障害)が良くなったと勘違いされるお母さん、お父さんもおられます。そして、それを「発達障害は食事で良くなる」と宣伝する人達がいます。惑わされないように注意しましょう。
食事への極端なこだわりも”世界観”からきている
触感や味、におい、色や形、食べ物から出る音など、その子なりに受け取った毎秒126ビットがあります。それによって食べものの好き嫌いも生まれます。
もしかしたら、過去の経験と食べ物が紐づいているかもしれません。うちの母は、鶏肉を食べませんでした。子供の頃にニワトリをしめているのを見てから食べられなくなったそうです。僕自身は、魚屋で買った魚はたべられましたが、自分で釣った魚は生きているときの魚が動いている様子や東京湾の汚い海を連想して食べられませんでした。
食事へのこだわりも、子供の世界観から来ています。ですので、私達にとっては大したことなくても、その子にとっては重大なことは何かに気づいてあげることで、調理法や食材、盛り付け等を工夫するヒントになります。
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3.他の子は出来るのに何でうちの子はできないの?日常生活のあれこれ
食器を使えない、トイレットトレーニングが進まない
神経発達症(発達障害)の子は日常生活の中での基本的な動作の獲得も遅れがちです。遅れがちといっても、一生できないわけではありません。まわりの子たちとくらべて、遅いだけです。
例えば、食事のときにスプーンやフォークなどの食器が使えない。トイレでの排泄ができず、いつまでたってもオムツがはずれない。とくにトイレに関しては、神経発達症(発達障害)の子は、排便に関心がなかったり、他の遊びに集中すると排便に意識が向かなくなる、家以外のトイレでは絶対にうんちをしたがらないことなどが原因で便秘になりやすい傾向があります。
基本はその子のペースでの成長を待つ
自分の子が、まわりの子と比べて成長が遅いと、ついついイライラしたり、悲しくなったり、ずっとこのままではないかと不安になったりします。
僕の外来には、便秘でトイレットトレーニングが遅れている子がたくさんやってきます。お姑さんや幼稚園・保育園の先生から「あなたのしつけが悪い」と直接的もしくは間接的に言われて、落ち込んでこられるお母さんもいます。もちろん、「しつけが悪い」からトイレットトレーニングが遅れているわけではありません。
「大丈夫だよ、お母さん。この子のペースでできるようになるのを待ちましょう。一生おむつでうんちする子はいないから。」と僕が話すと、涙を流されるお母さんもいます。
行動する”きっかけ”をつくってあげる
「待ちましょう」と言われても、何かできることはないのか?と考えますよね。
例えば、トイレットトレーニングで言うと、トイレに行きたくなるようなきっかけをつくってあげることが大切です。以前、Twitterの記事で見たのですが、トイレまでの廊下に紙を切り抜いた足跡を張り付けて、それをたどっていくと自然とトイレに入るようになったそうです。
トイレでうんちができたら、お気に入りのキャラクターのシールを張れるようにしたり、お気に入りの絵やポスターを飾ってデコレーションしたり、お気に入りのキャラクターのパンツを買ってあげたり
その子がオムツじゃなくてパンツをはきたくなるような、トイレでうんちをしたがるようなきっかけを作ってあげることが大切です。
トイレットトレーニングについてもっと詳しく知りたい方はこちら
手づかみ食べを卒業して、スプーンやフォークで食べられるようにしたいなら、スプーンやフォークは必ずテーブルの上に用意するようにしましょう。「どうせ使わないから」と準備するのをやめてしまうと、スプーンやフォークで食べるきっかけすらなくなってしまいます。そして、実際に親が食べているところを見せてあげることも大切です。
やってみて、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ

私が講演でトイレットトレーニングについてお話をするときに必ず紹介する話があります。それは大日本帝国海軍 山本五十六元帥の言葉です。
「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」
この言葉はビジネスの世界で人材育成やマネジメントのコツとして紹介されることがあります。しかし、これは子育てにも当てはまります。